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『ハースストーン』の日本語ローカライズを、現在出ている情報から考察

【注】
このエントリーは、2015年10月5日までに公開された情報をもとにして書いております。

【追記】 2015年10月24日
日本語版を実際に遊んでみた感想を本エントリー最下部に追記しました。




こんにちは。管理人の羽無エラーです。

先週末、ブリザード社の『Hearthstone: Heroes of Warcraft』(以下『ハースストーン』)の日本語版リリースが電撃発表され、ゲーマー界隈でちょっとした話題となっています。


k.jpg
「Hearthstone」の日本語版が発表。10月中にサービス開始予定で,インタフェースはもちろんキャラクターボイスも日本語に


本作はこれまで日本化されていなかったため、英語アレルギーのあるゲーマーにとっては少々手が出しづらいシロモノでした。実際、管理人の周りにも、触れてはみたものの英語が読めないので早々に戦線離脱した、という知人が複数います。今回の日本語化を契機にハードルが格段に下がり、日本人プレイヤーが倍増することは間違いありません。しかもベテラン声優を起用してボイスをフルローカライズするという徹底ぶりも大変素晴らしい。基本的には、日本語化のニュースが日本人ゲーマーにとって朗報であることは確かです。

しかしネット上でこの報道への反応を見るに、必ずしも諸手をあげて大歓迎する人ばかりではなさそうです。すでに日本語版のスクリーンショットや動画がいくつか公開されているのですが、それらを眺めて、「何だか日本語がダサいような…」という声がいくつも挙がっているのです。そういった意見はあくまで一部ではあるものの、決して無視できるほど少なくはありません。一体どういった部分が違和感を生み出しているのでしょうか。




■違和感の種類
洋ゲーの日本語版において「日本語がダサい」というのは、大きく分けると以下の三つに分類できると思います。

① 日本語化されていること自体に違和感を覚える
② 日本語のフォントに違和感を覚える
③ 日本語のワーディングに違和感を覚える

①に関しては、もうどうしようもありません。日本語版を遊んで慣れるほかないでしょう。逆にいえば、時間が解決してくれる問題ではあります。

また、②のような意見も多少見受けられますが、これについては実際に日本語版を遊んでから判断したいと思います。管理人自身、フォントに対する知識が浅いことから、現在公開されている画像/動画を見ただけでは何ともいえません。より良いフォントを提案するというのも現段階では難しいです。

一方、③については、管理人も確かに少々思うところがあります。簡単にですが説明しましょう。




■漢字が多いのでは?
現在公開されている日本語版の画像/動画を見たところ、カタカナ(もしくは英語)のままで良い単語まで一部漢字になっているように思えます。例えばですが、本作ではミニオンカードが持つ特殊効果に、「Charge」、「Battlecry」、「Stealth」などがありますが、現状ではそれぞれ、「突撃」、「雄叫び」、「隠れ身」と訳されているようです。


jpntik001.png
※カードのキャプチャ画像は「HearthStone Read2Win」さんより転載。
※特殊効果の和訳については、アスキー社の記事に詳細が記載されています。


好みの問題でもありますが、これらはそのままカタカナ表記で、「チャージ」、「バトルクライ」、「ステルス」とした方が英語版の雰囲気を残せるのではないでしょうか。あるいはアルファベットのまま残してしまっても問題ないかもしれません。

同じ洋物カードゲームということで、どうしても『マジック:ザ・ギャザリング』と比較してしまうのですが、『マジック』の場合は、「パワー」、「タフネス」、「アーティファクト」、「トランプル」、「ソーサリー」などなど、ゲーム内キーワードの多くがカタカナ表記となっています。原文の雰囲気を損なわないための策でしょう。または、カタカナ表記になっている方が外国人プレイヤーとのコミュニケーションが取りやすいから、や、英語版カードを購入したプレイヤーが用語を照合しやすいから、などプレイヤーの利便性に配慮しているとも考えられます。日本で開発された、例えばブシロード系のカードゲームなどでも、ゲーム内用語には割と横文字が多く含まれている印象です。
【追記】
この部分に関してですが、「『マジック』でカタカナ表記されているのは基本的に初期の用語であり、その後に追加された用語は主に日本語化されている」という情報を目にしました(裏取りはまだです)。そのような、ゲーム内用語を日本語化するというトレンドがあるのなら、『ハースストーン』もその時流に乗っていると考えることもできますね。


GR121-249.jpg


『ハースストーン』で特に管理人が気になったのは、ゲームモードのひとつ「酒場の喧嘩」です。原文は「Tavern Brawl」であるため翻訳としては正しいし、あくまで単体で見ればこれはこれで味わいがあるのですが。ほかのゲームモード名がすべてカタカナ表記になっているため、統一感という点においては浮いてしまいます。ここはカタカナで統一し「タバーン・ブロール」で良いのではないでしょうか。さらにいえば、モード名すべて英語のままでも問題ないと思います。「酒場の喧嘩」としたところで、字面の意味は伝わってもモードの内容は結局説明を読まなければ想像できませんしね。

漢字とカタカナでは、読み手に与えるイメージが大きく異なってきます。カタカナが多すぎても、いわゆる「宇宙人語」や「ルー語」が出来上がってしまうためさじ加減が難しいところではあるのですが。『ハースストーン』はすでに英語版を遊んでいる日本人プレイヤーが多く存在するため、ゲーム内用語に漢字をあてればあてるほど違和感が膨れ上がっていくのではないかと思いました。


HS101_800x401.jpg
http://app.famitsu.com/20151003_577744/





■二人称の「君」(きみ)
前述の「漢字」に関してはまだ好みが分かれる要素だと思いますし、日本語版を遊んでいくうちに慣れていき違和感が払拭されるとも思います。が、二人称の「君」だけは、たとえ英語版を遊んだことがなくとも場違いな印象を受けるのではないでしょうか。

HS105_800x401.jpg
※視認しづらいですが、カードの説明文でプレイヤーのことを「君」と呼んでいます。


yourturn.png
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27296202
※「君のターン」


カードゲームの説明文やルールブックというのは本来客観的に提示されるものです。二人称が「君」だと、少々軽いといいますか、ゲームとプレイヤーとの距離が近すぎるといいますか。もともとそういったコンセプトの作品なら構いませんが、悪い言い方をすると稚拙な印象すら受けます。『マジック』ではプレイヤーのことを「あなた」と呼んでいますし、対象年齢が低めの『遊戯王カード』ですら「自分」です。


jp_1qs5rloko4.png YUUM024.jpg


ただし、日本語版『ハースストーン』の画像や動画をもっと探してみると、「君」ではなく「自分」と書かれているカードも存在します。まだ翻訳が完了しておらず統一されていないだけかもしれません。それに、たとえ現状は「君」であったとしても、サービスイン後のアップデートで「自分」の方に統一される可能性もあります。これについては続報に期待したいところです。


jpnapp01.png




■原因は、表示できる文字数が少ないから?
漢字が多めであったり、プレイヤーのことを「君」と呼んでいたりするのには、ひとつ根本的な理由が考えられます。それは表示可能な文字数が少ないことです。

日本語版のカード画像をいくつか見ると、どうやら全体の文字数によってフォントサイズが変化する可変式をとっているようです。例えば下の二枚のカード説明文では、左の「ヴァリアン・リン」の方が文字の総数が多いため、右の「ネファリアン」よりも説明文のフォントサイズが小さくなっています。


jpnvar01.png jpnef01.png

カードによって説明文のフォントサイズが異なり、ものによっては文字が異様に大きかったりもします。特に、上に掲載した「魔法使いの弟子」のように、説明文の文字サイズがカード名を上回っているというのはカードゲームとして珍しいでしょう。そのため、冒頭で述べた「フォントの違和感」の正体が実はこれだったという方も案外いるのではないかと思っています。

文字サイズが自動で調節されるのなら何文字でも表示できるじゃないか!と思われるかもしれませんが、そうとは限りません。本作はPCのみならずiOS/Androidにも対応しているため、スマホの小さな画面でも可読性を著しく落とさぬよう最低限のフォントサイズは保つ必要があります。上掲の「ヴァリアン・リン」くらいの文字サイズが限度ではないでしょうか。そう考えると、一行の文字数はせいぜい15文字前後。行数は4行まで。これは、カード説明文の表示領域としては狭い部類に入ると思われます。『マジック』や『遊戯王カード』と比較すると一目瞭然です。

文字数制限が厳しいと、表意文字的である「漢字」に依存せざるを得なくなります。漢字を使えば、雰囲気はさておき、少ない文字数で多くの意味を伝えることが可能であるからです。前述の「Tavern Brawl」も、「タバーン・ブロール」では表示領域からはみ出すか、もしくは文字サイズが他と比べて大幅に縮小されてしまうため、あえて「酒場の喧嘩」とした可能性があります。

また、『ハースストーン』がアップデートを伴う作品であるという点も、漢字への依存度を強める一因となってきます。本作では今後定期的に行われるであろうアップデートでどのようなカードが追加されるか翻訳者にも不明です。むやみにカタカナ訳を乱用すると、現状は何とか切り抜けたとしても、今後追加されるカードの説明文が長くなりすぎて読めなくなる、といった問題も起こり得るのです。漢字を比較的多用しているのは、どんなに長い説明文が来てもできるだけ文字数を節約するためだととらえることもできます。




■まとめ
結論として、日本語訳から違和感を完全に取り払おうと思っても、文字数の制約上なかなか思い通りに訳すのは難しいようにも思えます。「君」を「あなた」に変更するくらいは現行のシステムでも可能だと思いますが。まあそこは、サービスイン時やそれ以降のアップデートで日本語訳がどう変わっていくかに注目したいですね。

ただ、上述のような若干の違和感はあれど翻訳自体のクオリティは全体的に高いといえます。カードの説明文は、厳しい文字数制限の中とても分かりやすく訳されています。ボイスの翻訳も素晴らしい出来だと思います。

日本語版『ハースストーン』は2015年10月中にサービスイン予定とのことです。英語だからと敬遠していた方々は、これを機にぜひ遊んでみることをオススメします。

『ハースストーン』日本語版特設サイト


ではでは。


【追記】 2015年10月24日

言語を日本語設定にして遊んでみました。確かにフォントの見栄えは悪い箇所があります。一見、MS明朝/MSゴシックかと思うような、全体的にデフォルトチックなフォントであり、こだわりが感じられません。また、明らかにUIに溶け込んでおらず、無理やり張りつけたかのように見える日本語テキストもあります。そこはオンラインゲームということで、今後のアップデートに期待ですね。

和訳に関しては、初見では違和感が大きかったものの、遊んでいるうちに徐々に慣れてきました。「あんたが先手だ」など、確実に好みが分かれるテイストではありますが。宿屋でお酒を飲みながら仲間内でカードゲームをプレイしているような雰囲気が出ていて、私は好きかもしれません。この方向性で突き抜けてくれれば、それはそれで魅力的なのではないでしょうか


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